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和印 ニュース
WA-JIRUSHI  NEWS

「記念すべき第1回・和印マーケットの思い出」by 和印2号

2023.06.30 (金) 

前回のブログでお話ししましたが、『和印ストリート』の起源である『和印マーケット』という催事は、今から19年前の2004年に産声を上げました。

当時、カジュアル着物という文化はすでに市民権を得てはいましたが、一般的には「正絹の礼装用着物ではない普段用の着物」という括りでしか捉えられておらず、支持層は本当に一部の和ものファンに限られていました。
ましてや「和洋折衷の着こなし」などは、まだまだ先進的すぎて受け入れがたい土壌を保っていたのです。

「それでも面白いものは広めたい!」
「オシャレはもっと自由であっていい!」

そういった気持ちと、「売るだけが催事じゃない。来て、見て、楽しんでもらう、そういう主旨の催事があってもいいんじゃないか」という思いを持って、私たちは『和印マーケット』に携わっていきました。

かくして初の大型新企画催事。
全国から集まってくれるショップさま・クリエイターさまは、当然ながらほとんどが百貨店催事への出店は初体験の状態です。
大会社ゆえの一見ムダと思えるような細かい制約がいろいろとあるなか、皆さん事前の手続きなどを漏れなくこなしていただき、開催前日の夕方を迎えました。
店員通路入口前で、全国各地からいらっしゃった多数のショップさま・クリエイターさまと初対面!
あのときの言いようのない高揚感は今でも忘れません。
「うわあ……。何かスゴいことがはじまるんじゃないか……」
そんな気持ちで、私は全員に臨時入館用バッジをお渡ししていきました。

※因みにこの第1回にご出店いただき、現在の「和印ストリート」にもご参加いただいているショップさまは、
 カラットさま、文楽足袋さま、キモノ仙臺屋さまの3ショップです。ありがとうございます!
 (3年目には、和次元滴やさまもご参加!)

さてそして、夜を徹しての会場準備。
まるで学園祭前日のようなワクワクした心境と同時に、朝までにすべてのブースを「百貨店催事」として成り立つ顔立ちに整えないといけないというプレッシャーが私の心を支配していました。

しかし、「楽しさ」は「苦労」を難なく凌駕する!
このことに気づくのには、さほど時間はかかりませんでした。

翌朝には無事に素晴らしい会場が出来上がり、「和印マーケット」は和ものファンのドキドキを乗せて快調にスタート!
会場はこれまでの呉服催事とは明らかに異なる客層で溢れかえり、実に活気ある雰囲気。
まさにお客様と出店者さまが一体となって、「和の空間」を盛り上げている感じでした。

そして、あっという間に会期の1週間が過ぎ、「和印マーケット」は大きな成果を残して終了。
それまで各地において小規模でおこなわれていた同種のイベントから換算すると、比率的な売上高も相当いい数値でした。
しかし反面、「百貨店の催事場」という場所においては、その面積効率から考えると売上高は基準値の半分ほどという厳しい見方もされました。
それでも私は、呉服催事の新たな可能性を見出し、多くの和ものファンの笑顔であふれる空間を創り出せたということで、「和印マーケット」は売上高以上の価値を残したはずだ!と胸を張りました。

とは言え、いくら自分で胸を張ろうが現実は甘くはありません。
翌年、同じようにこの催事を実施できるかどうかは、やはり「売上高」にかかってくるという、かくも厳しい現実が、1年後の私にのしかかってくるわけであります……。

次回はその苦悩をリアルにリポート!

≪つづく≫

「第2回・和印マーケットは苦難の連続!?」by 和印2号

2023.07.05 (水) 

2004年の4月に実施された第1回『和印マーケット』は、多くの和ものファンの夢と期待とともに、実にいい感触を残して終了しました。
しかし一方で、百貨店の催事会場という広いスペースを使用するイベントとしては、面積効率に見合う売上高とは言えぬ結果でした(それでも予算は達成したのデス!)。

新規として実施した催事を翌年もやれるかどうか?
それはやはり「売上高」が大きな意味を持ちます。

『和印マーケット』は新たな顧客層を呼び込み、話題性では申し分ない成果を残しました。
しかし、それだけでは「もう一度やる価値あり」とはみなしてもらえません。
翌年も開催する条件として、私たちはなんと第1回の4割増しの予算を強いられました。


4割増し!?
第1回の数値も平均単価からすると大成功だったはず。それでも許してくれないのが百貨店という器。
なんとかして売り上げの嵩増しをすべく、私たちはひとつの策を講じることにしました。

それは「リサイクルきもの」の導入です。

新機軸の和催事をおこなう一方で、私たち呉服部の面々はもちろん部全体の数値を伸ばす方策も続けていました。
その一端を担っていたのが、当時一大ブームとなっていた「リサイクルきもの」のバーゲン催事なのです。

今でこそ、リサイクルきものもアンティークきものと同様に広い年齢層に愛されるようになりましたが、その当時はまだ高い年齢層の着物ファンが一堂に集うまさに「バーゲン催事商品」でした。
ただ、そういう側面にいち早く目をつけた一部の仕掛け人たちが、百貨店という大きな集客が望める土壌ですさまじい成果を出しはじめていたのです。

私たち百貨店マンもその協力に大いに感謝しており、すでに年間催事の柱となっていた「リサイクルきもの」を、部分的に『和印マーケット』に組み込むことにしたのです。

ただ、問題はテイストの違いです。
商品内容は問題ないとしても、その時点では顧客層があまりにも異なる様相でしたので、双方の世界観がぶつからないか?という懸念はありました。
しかし、『和印マーケット』とて昨年生まれたばかりの言わば原石状態です。
すでに確実なノウハウと圧倒的なパワーを有している「リサイクルきもの」業者がそこに加われば、また新たな化学反応が生まれ、『和印マーケット』はさらに進化するに違いない!
そう信じて、私たちは翌年開催へ向けて走り出しました……。

それから数ヶ月かけて全国各地のショップさま・クリエイターさまと交渉し、会場図面を綿密に設計し、昨年よりも多くの出店者さまが集まりました。
昨年の折込チラシモデル撮影は、「ゆかた2枚重ねにレース帯盛り盛り」という華やかさと斬新さをアピールしたものにしましたが、今回は「和装折衷」をテーマとし、帽子に革ベルト、サンダルと洋装を随所に取り込むコーデで切り込みます。

そしていよいよ会期前日の夜。
まずは各ショップからの荷物の受け入れです。

その百貨店は木曜日が週の立ち上げ日ということで、催事会場の入れ替えや各売場の模様替えなどは水曜日の夜に集中する状態となっていました。
そんな荷受け場や貨物用エレベーターが戦場のような状態のなか、昨年より数倍にも膨れ上がった商品数が、次から次へと催事会場へと運ばれていきます。

ここの第一のハプニング。
百貨店のシステムに慣れていない業者さまが多かったためか、入館バッジをつけていなかったり、規定の時間よりはるかに早く荷物を上げたり、置いてはいけない通路に段ボール箱を積み上げたりとトラブルの連続!

百貨店という空間は、規模が大きいだけにしっかりしたルールで統制されています。
しかし、はじめて来る方々にそれを100%守れというのも酷な話。
逆に言えば、それをしっかり調整するのが私たち社員の役目となるわけです。

何とか無事にすべての荷物を会場に入れ、いよいよ設営に入りましたが、そこで第二のハプニング。
「設営の什器が思っていたのと違う!」
「あのショップの什器をこちらにもよこしてくれ!」
などなど、会場のあちこちから怒号がひしめき合う状況に。

この時点で、後方部の催事担当者が「危険な匂いがプンプンする現場だなあ……」と呟きます。
ここで言う「危険な匂い」というのは、翌朝の開店時に「百貨店としてふさわしい顔」に仕上がっていない売場の状況をお偉いさんが見て怒り飛ばす……という予測ですね。

まあ、参加ショップを増やせば、やはりそれだけいろいろな人間が集うわけです。
そして、情熱を持った人ほどこだわりも強く、「いいものをつくりたい!」という思いに溢れています。
怒号はエネルギッシュな姿勢の裏返し!
逆に何でも言われたとおりに進めていては、お客様に満足いただけるものにはならない!
そういう思いを受け止めた私たちも、同じ温度感でエネルギッシュに動き回りました。

そして会場もそこそこ完成し、時計が深夜0時を指すころ、最大のハプニング。
なんと、折込チラシのメインとしてモデル撮影した商品がない!!

青ざめた私たちは売場をひっくり返して捜索しましたが、その商品は見当たりません。
そして各方面に確認した結果、メーカー棚卸しのためにいったん京都に戻していたその商品を、こちらに戻し忘れていたということが判明。

……どうする!?

急遽関係者でミーティングを開き、深夜にもかかわらず取引先担当者と連絡を取り合い、なんとか翌朝一番の新幹線で京都へ走り、商品を持って開店の10時までに間に合わせる段取りをつけました。

それらヒヤヒヤの連続を乗り越え、いよいよ開店時間。
心配された会場の顔も整い、第2回『和印マーケット』は華々しくスタートしました!

予想どおり、若い「和印ユーザー」と年配増の「リサイクルきものユーザー」が混在する空間となりましたが、それが変にぶつかり合うということはありませんでした。
逆に、リサイクルきものコーナーでベテラン着物愛好家さんが若いユーザーに選び方を教えていたり、オシャレな小物ショップで年配の方が楽しそうに髪飾りを合わせたりと、なんとも微笑ましい光景があちらこちらで見受けられます。

もちろん、いわゆるポリスマンも少しはいたことでしょう。
しかし、自由な発想と自由な着こなしで「着物のオシャレを本気で楽しむ和ものファン」の圧倒的エネルギーの前では、そんな圧力は軽く吹き飛ばされていたようですね。

かくして『和印マーケット』は第2回も見事予算を達成し、大成功のうちに幕を閉じました。
細かい改善点は当然いくつかあります。
しかし、それこそ第3回へ向けての布石!
来年はさらにパーワアップしたものに進化させようと心に誓い、2005年の春が去っていきました。

そして翌2006年。
『和印マーケット』にジューダイな転換期が訪れます……。

≪つづく≫

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